ブラジルでコロナ蔓延
- 変異ウイルスの感染拡大が続く南米ブラジルでは一日あたりの死者数が5日間連続で2000人を突破し、死者数の増加ペースが世界最悪となっている。
- ブラジルではコロナ感染の拡大が止まっていない。ワクチンの配布も遅れており、ボルソナロ大統領への批判の声が高まっている。そして1月下旬には左派政党や労働組合などが首都サンパウロやリオデジャネイロで大規模なデモを実施し、新型コロナ対策への不満と大統領の退陣を要求した。
マズローの欲求五段階説
- アメリカの心理学者アブラハム・マズローは人間は自己実現に向かって絶えず成長すると仮定した上で、人間の欲求が五段階の階層から成るとする仮説である。よくピラミッドの形をした図が用いられるため、見たことがある人も多いのではないだろうか。
- この理論によると、五段階の欲求は最も高次のものから順に以下の順に階層化される。
- 自己実現の欲求
- 承認の欲求
- 社会的欲求
- 安全の欲求
- 生理的欲求
- 最も低次にある生理的欲求は、食べることや寝ることなど、生命維持に必要な本能的欲求である。ここが安定しない場合、生理的欲求が最も強い動機付けとなる。
- 次に安全の欲求とは、健康の維持や経済的安定性、身の危険からの回避など予測可能で秩序だった状態を望む欲求である。
- 社会的欲求とは、自分が社会に必要とされている事を感じたいという欲求である。孤独感から解放されたいという欲求といえる。
- 承認の欲求とは、自分が社会から価値ある存在であると認められたい欲求である。
- 最後に最も高次にある自己実現の欲求とは、自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなり得る自分にならなければならないとする欲求である。
為政者に求められるもの
- では、このような欲求のうち為政者に求められるのはどれだろうか。これが満たされなかったらアウト、というような欲求はあるのだろうか?
- この答えは当然イエスだ。マズローの欲求五段階説は、最も低次のものから順番に、「もしそれが為政者の元で満たされない場合、それを求める声の強さ、激しさ」を表していると考えられるからである。
- よく言われているように、為政者への反乱の原因を辿っていくと政策への不満などよりもむしろ、飢饉があった。飢饉は生理的欲求の危機的状況を意味するから、その解消欲は非常に強い。為政者への風当たりも当然強くなり、最後は暴動を起こすまでに至る。
- これは何も今更言うまでもないことで、古代から為政者はそのことを意識せざるを得なかった。世界各地の遺跡の調査によれば、農業を基盤とする古代文明の大半が、飢饉に備えて食料を備蓄するための大規模な設備を持っていた。異常気象や戦争などで収穫が落ち込んだ時には、備蓄してある食料を住民に提供することができた。為政者はこうしたタイミングできちんと住民の胃袋を満足させ、自らの信頼と人気を確固たるものにしていく必要があったのだろう。日本でも縄文式土器などは食料の備蓄用に開発されたものである。
- では、新型コロナへの対応はどうなのだろうか。元米国大統領のトランプ氏は新型コロナウイルスへの対応のまずさなどが指摘されていた。同氏の場合はさまざまな論点があるため、一概に新型コロナウイルスへの対応だけでどうこういえない気もするが、政権は交代した。
- ブラジルについても、冒頭の通りデモが起こっている。新型コロナウイルスは安全の欲求への強い思いを顕在化させ、それが為政者をして経済対策よりも安全の欲求への対応を優先させるのかもしれない。