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トヨタ、スマートシティ開発に参入、静岡の工場跡地に

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日経新聞は1月7日、トヨタが静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を利用してスマートシティを構築すると報道しました。

トヨタがスマートシティ?と思う方も多いかと思いますが、そもそもスマートシティってどんなものなのでしょうか。よく聞くスマートホームとか、スマートメーター、スマートなんたら、、これらが全部盛りになった都市のことでしょうか。

国交省はスマートシティとして、以下のようなポイントを含むものとして整理しています。

  • Mobility(交通)
  • Nature(自然)
  • Energy(エネルギー)
  • Safe&Security(安全安心)
  • Recycle(資源循環)

これらのポイントを、街中に張り巡らされたカメラやセンサーを通じて拾ったデータをAIが自動で処理し、最適化して効率的かつ効果的に住民生活を遅れるようにしよう、というようなものと考えて概ね間違いないでしょう。

たとえば、信号機にセットされた監視カメラが歩行者の歩行スピードを測定して渡り切るまでの時間を計算し、自動で青信号の時間を調整するというようなことや、ゴミ箱に設置されたセンサーが満杯になっていることをゴミ清掃者に自動で知らせるというようなことですね。

スマートシティは中国を始め世界で今後需要が増えてくる有望市場と思われます。何しろ、全世界ベースでみると都市部の人口は過去30年間で毎年平均6,500万人のペースで増加し続けている(注)のです。毎年、東京23区に匹敵する都市が世界で7つ新規で現れていることになります。そして、特に今後は都市部といっても先進国の大都市ではなくて、中国や東南アジア、アフリカといったまだまだこれから発展途上にあるあまり有名ではない都市で増加が顕著になります。

すでに便利になってしまった先進国の大都市を今からスマートシティに基づいて街を作り直す労力を考えると、新興国のまだまだ都市化が十分ではないところをいきなりスマートシティにしてしまった方が速いと言う話です。

なので、自動運転を通じて街の様々なインフラと情報をやり取りする世界を描いているトヨタとしては、スマートシティを実現させていく上でどういうふうにモビリティサービスを展開できるか、その実証実験をする上でもこのような取り組みは必要かつ重要なのでしょう。

とは言っても、です。スマートシティは夢のような便利な街で良いところ尽くしか、というと留意点があります。それは、街のインフラや公共の場所のあらゆるデータをセンサーやカメラを通じて集めているので、個人のプライバシーの問題があるのです。

実際、すでに中国では街中に監視カメラが張り巡らされているところもあります。それらはむしろスマートシティというよりは、治安維持の目的もあるかと思いますが、まあとにかく個人が特定されやすくなる社会になるので、情報の取り扱いが問題になってくるのです。

Googleの親会社であるAlphabet傘下のSidewalk Labはカナダのトロントでスマートシティの実現に向けたプロジェクトをスタートさせていますが、このプロジェクトの開始にあたってもSidewalk Lab社が個人のプライバシー情報を扱えるようになることについて、批判や論争が巻き起こりました。

トヨタが進める裾野市とのスマートシティ構想も、もともと工場を設置していた時から裾野市とは良好な関係を持っているようではありますが、こうした問題を裾野市と組んでクリアしていかなければならなくなると思われます。

それでもトヨタにとっては実行する価値のある取り組みだとは思います。ただ一つ気がかりなのは、自動車という物作りについて下請けメーカーと膝を詰め合わせて製品開発をしていくようなスクラム体制は電気自動車の物づくりには必ずしも重要ではなく、むしろ自動運転の中枢部分はAIをベースにしたアプリケーションの絶えざる改善と(各自動車への)配信というプロセスにシフトしていくのでないかというところです。

ここのところはトヨタといえどもテスラの後塵を排していると思います。また、スマートシティについてはIBMやシスコシステムズといったIT系の企業が先行しています。だとすると、スマートシティの構想の中でトヨタでなければならない価値はどこにあるのか、これが最も重要な問いかけになっていると思います。

(注)「マッキンゼーが予測する未来」より

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