こんばんは。
今日は日本ではあまり大きく取り上げられてはいませんが、大きな経済問題であるハイパーインフレの問題について、ベネズエラのケースを数字と共に見ていきたいと思います。
今日の内容は以下の通りです。
では見ていきましょう。
ベネズエラのハイパーインフレ
まずは以下をご覧ください。
「インフレ率81万%」ってなに??そもそもインフレ率って?という話がまずあろうかと思います。
インフレ率については、下記の説明をご覧ください。
例えば、インフレ率が年率10%だとすると、1月1日に100円だったおにぎりが、12月31日には110円になってます。
じゃあ、インフレ率が年率100%だった場合はどうでしょうか。この場合、12月31日におにぎりは200円ですね。
さらに、インフレ率が810,000%だった場合はどうでしょうか。
なんと、この場合1月1日に100円だったおにぎりが、12月31日には810,100円になってしまいます。
81万円ださないと買えないおにぎりって、、、軽自動車買えるやん。
物価の上昇というのは、裏を返すと貨幣価値の下落です。もともと100円出せばおにぎり買えていたのが、貨幣の価値が下がってしまって81万枚100玉を積み上げないとおにぎりが買えなくなってしまったと。そういう世界です。
これが現実のベネズエラで起こったことだと、信じられますか?
この、とんでもないインフレ率が進んでいくことを「ハイパーインフレ」といいます。
ベネズエラ中銀が公表した資料によると、ベネズエラのインフレ率は下の表のように年率2,680,000%近くから、直近では少し落ち着いてきているという状況です。
source: tradingeconomics.com
とはいえ、とんでもないインフレ率ですね。
年率80万%のインフレ下の生活はこんな感じ
年率800,000%でインフレが進む国で住んでいると、実際どんな感じなんでしょうか。
年間で言われてもよく分からないので、もうちょっと生活感をだすために月次でみてみましょう。
年率800,000%のペースは月次になおすと下の表のようになります。
なんと、1月1日に100円だったおにぎりが、1月末には212円になっています。
ひと月経つごとに、値段が倍になっていきます。倍々ゲームです。
これ、よく考えてみてください。
例えばベネズエラでタクシーのドライバーをしていますと。
給料は1月に働いた分は1月末にもらうという場合、物価が2倍になっているので実質給料は半分になっています。
日払いでもらわないと、追いつかないレベルです。
みんなそうやってどんどん紙幣を下ろしに来たら、お金が銀行に無くなってしまいます。だから政府はお金を刷ります。
ところが刷っている間にもどんどんインフレが進むので、発行しても発行しても追いつかない状態になり、銀行に紙幣がなくなってしまっているというのが現状です。
なので、お金があっても引き出せない、引き出したとしても物が高すぎて買えない、という状態です。
もう、想像するだけでも悲惨な状況です。
ベネズエラの経済・歴史
そもそもベネズエラってどんな経済の国なんでしょうか。
ベネズエラは豊富な石油資源があり、埋蔵量では世界有数です。石油の輸出国として、1950年代にはアメリカ、ソ連に次ぐ産油国となり、一人当たりGDPは南米一の水準だったのです。石油の輸出は同国にとって最も重要な外貨獲得手段であるとともに、経済の中心だったのです。
それが1980年代に入り、原油価格の下落を受けて経済が停滞します。
下のグラフはベネズエラのGDP成長率と石油価格の変化率を表したグラフです。
(出典:International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, April 2019、World Bankより筆者作成)
(2018年度はIMF予測値)
ベネズエラの経済が石油価格の変動に影響を受けているのがよくわかりますね。
ところが、直近ではまた動きが変わってきているのです。2016年以降、石油価格は回復しているにも関わらず、ベネズエラのGDPはマイナス成長を続けています。
石油に依存した経済になっているとはいえ、これはどういうことでしょうか。石油価格は回復しているのに、その恩恵にあずかるどころかマイナス成長を拡大しています。
実は、今の大統領(マドゥロ大統領)が就任した2013年以降、およびその前任者のチャベス政権時から続いている国家介入型の経済運営がひどく失敗していることがその原因として考えられます。
国が介入して、石油公社の人事を握り、素人をトップに据えて石油開発とは関係のないことに大量にお金を使わせたり、それによって膨らんだ財政赤字を国家中央銀行に貨幣を発行させて賄うという、ヤバイ経済運営です。
これ、今の日本も似たようなことになっていますよね。。
毎年多額の財政赤字があるにもかかわらず財政出動は止まらず、国債の発行に依存した財政運営になっています。
さらに政府発行の国債を日銀が引き受けるというような禁じ手をやっていますが、国債の保有者が国内投資家なのでまだ大丈夫なのだ、日本の家計余剰資産は1000兆円以上あるから大丈夫だ、などと言われていたりします。
まあとにかくヤバイ運営を続けて、しかも誰も止められないのでどんどん悪化してついにはパイパーインフレになってしまったのです。
まとめ
- ベネズエラではハイパーインフレが起こっていて、年率80万%で物価が上昇している。
- 年率80万%というのは毎月物価が倍になり続けるペース。
- こうなった要因は自律性を欠いた国家介入型経済運営の失敗にある。