こんにちは。
今日は日本の景気を見る一つの方法である、不良債権についてみてみましょう。
その前に、そもそも不良債権って何?という人もいるかもしれませんので、先に説明しておきます。
ざっくりいうと、不良債権というのは「金融機関が貸し出ししているお金のうち、返ってこなさそうなもの」です。
返ってくる前提で貸しているのに、返ってこなさそうなんだからこれはもう不良品だよね、いや債権だから不良債権だろう、ということでそんな呼ばれ方になっています。
日本の銀行はすべてこの不良債権が各期末でどのくらいあるのか、金融庁に報告する義務があります。
金融庁では各銀行から集めた不良債権の残高を時系列で整理して、不良債権のデータを開示してくれています。
では早速見てみましょう。この表は金融庁が開示しているデータです。
(出典:金融庁HPより筆者作成)
まずは上のグラフを見てください。これは、総与信といって、金融機関が貸し出している実際の残高合計の推移です。
不良債権も、正常な債権も全て合わさった、要するに貸してる額です。
そして下のグラフで「金融再生法開示債権」としてある(青色の棒グラフ)のが、いわゆる「不良債権」です。
貸している総額は増えているけども、一方で不良債権の残高はここ15年で大幅に減らしてきています。
したがって、その割合を示す不良債権比率は、15年前は8%を超える水準だったのが近年では1%を切る水準まで落ちてきています。
じゃあ、この間日本経済は良くなったのでしょうか。
すくなくともそんな実感はありませんよね。
実は不良債権が減ったのは、あるカラクリがあります。
それは、「モラトリアム法案」というものです。リーマンショック後の2009年に施行された法案で、要するに「金融機関よ、今会社はリーマンショックのあとでめちゃしんどい時期だから、「ちょっと返すの待って」って債務者から言われたら、ちゃんと聞くように。聞いてるかどうかちゃんとチェックするからな。」というものでした。
これに基づいて借金の返済を一時的にストップする流れが加速しました。
でもそうやって返済をストップした貸し出しって、要は最初に見た「不良債権」の定義にあてはまりますよね??
確かにその通りです。そのままだと不良債権はむしろ増加していたはずです。
ここで、カラクリがあって、一定のルールにのっとって返済をストップした場合は、不良債権にしなくていいよ、というルールが合わせて発動されていたのです。
銀行はもちろんそれに従います。
そうやって隠れ不良債権が大量に発生していたのがリーマンショック後でした。
しかしその法案もあくまで時限的なもので、2013年3月末でこの法案は停止されました。
ただし、あくまで法案は停止したものの、「モラトリアム法の精神は維持せよ」という命令が金融庁から出され、結局法案開始後10年経った現在、隠れ不良債権は8000億円ほどあるのではないかとも一説では言われています(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39992050U9A110C1MM8000/)。
ただ、それらを含めたとしても不良債権の額は一時のように10兆円を超えるような水準にはならないでしょう。
ただ、日本経済はこの15年で特に何も良くはなっていないので、生き延びた企業が今後、本当に立ち直るのかというと結局は立ち直らないまま生き延びて時間だけが過ぎていっただけ、という結末が見え始めています。