こんにちは。
唐突ですが、今日の数字というコーナーを思いついたので、とりあえず始めてみることにしました。
早速ですが、今日の数字は、、、
「有効求人倍率」です!
最初なのに地味!!と言わないでください。
この数字は、いまとても大事な意味を持っています。
「働き方改革」とか、「人手不足」とか、いろいろ毎日のようにこうした言葉が飛び交っていますよね?
そう、今の時代は人不足の時代です。
そして、それらを解決するために転職エージェントさんがあちこちで立ち上がり、はたまたRPAなるサービス(注:RPAって何?という方は、こちらご覧ください
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ロボティック・プロセス・オートメーション
)
が出たりと、つまり「採用そのものをさらに支援する」という動きと、「人手が足りないんだったら、もう人間にやってもらうのはやめにして、機械にやってもらおう」という動きが加速しているわけですね。
こうした動きの背景に、なんとなーく「人手不足」があるんだろうなぁ、、と、思っているとしたら、それは少し事実関係の認識がザックリしすぎています。
もう少しだけ精密に見てみると、また違った認識が出てきます。
早速見てみましょう。
下の表は厚生労働省「一般職業紹介状況」(平成31年2月分)から取ってきたグラフです。
(出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00016.html)
左半分の折れ線グラフを見てください。平成26年から1を超え、そのまま上昇を続けていますね。これがいわゆる「有効求人倍率」です。
求人倍率とは、ザックリいうと、(企業等が欲しいと思っている人の数)÷(転職または就職したいと思って職を求めている人の数)です。
有効求人倍率が高い(1以上)ということは、職を求めている人より会社側が欲しいと思っている人の数の方が多い、つまり「働く人にとって有利な状況」です。
なるほど人手不足な訳ですね。
でも、いまいちピンとこなくないですか?「1を超えているから人手不足だ」と言われても、、、みなさんそれぞれの肌感覚に合わないこともあるでしょう。
ところが、一緒くたに見ていると気づかないのですが、職業別に見ると状況は全然違います。
見てみましょう。
細かくてすみません。
(出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/G35-3102.pdf, 但し赤字部分はえーじが加筆)
かなり職種によってバラツキがあることが分かりますよね。
私が加筆した赤い部分を上から順に見ていきましょう。
開発技術者、、いわゆるエンジニアですね。これ足りてない。まあ、その通り。
建築・土木系は測量する人も実際に建てる人も足りていません。一番下の赤い括りが建築現場系の人たちです。全部高い。
上に戻って、医療系も総じて高い。その下、一般事務系は1を切っています。つまり、「もう仕事しんどいわ〜、なんか事務でホッコリ仕事したいなあ〜」と思う人の数の方が、「事務が足りない!どうしよ〜、、」と思っている会社よりも多いということですね。
さきほどRPAの話をしましたが、これはまさに事務系にぴったりのソリューションです。人が足りていないからRPAを導入するわけじゃないんですよね。
むしろ、間接業務をもっと合理化して、できるだけ人手を介さないようにしたい。この動きが強まっているので、事務系の有効求人倍率が今後1を超えて上昇し続ける可能性は極めて低いと思います。
さて、表に戻って介護系。これも足りない。その通りですね。その下の飲食も人が足りない、って言ってますよね。次に製造系。こちらも足りていない。私も仕事柄製造業の方々に接することが多いですが、足りるか足りないかギリギリのところでせめぎあっているイメージがあります。ドライバーがいないという問題もタクシーやバスなどで言われていますが、これもそのとおりですね。ただ、これは今後人を求めている側が減ってくる可能性が高いですね。自動運転の普及に伴って。
以上です。
どうでしたか?
中身を詳しく見ると、なるほどバラツキがあって、職種によってかなり状況が異なることが分かりました。
そして最後にもう一点、、しれっと流しましたが、開発技術者。これ、私が思っているより数字が低いです。建築や医療系など、ある程度「地場」の仕事はイメージに近いのに。
どうしてでしょうか。
これを知るには、「そもそもどういう数字からこの表が出来上がっているのか」を調べる必要があります。
で、調べてみると、、よく言われていることですが、いわゆる厚生労働省が開示している有効求人倍率は、「ハローワーク」に来ている求人と求職者のみからなる数字の統計なのです。
さて、こう聞いてどう思われますか?
あれ、転職するときに見るのってハローワークだけだったっけ?ということです。
いわゆる転職エージェントが山ほどありますよね。民間の。そういうところに登録している人は?また、そういうところに求人を出している件数は?、、、これらは残念ながら上記の表には一切含まれていません。
したがって、これが今の日本における求人と求職者の関係を正確に表しているかというと、限定付きということになります。あくまでハローワークでは、という。
ただ、毎年同じ方法で統計を撮り続けていることには変わりないため、時系列変化を見ることによって趨勢は分かるので、そういう捉え方をしてこの数字と付き合っていけばいいでしょう。
以上、今日の数字でした。
気になる人は、例えば
http://www.works-i.com/surveys/graduate.html
(リクルートが公表する大卒の新卒採用倍率)
や、
https://www.mhlw.go.jp/content/11654000/0000190329_1.pdf
(厚生労働省が公表する職業紹介事業報告書)
などを見れば、もうすこし深い知識が得られるでしょう。これらについてはまた機会があれば触れたいと思います。