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マスクの経済学

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日経新聞は13日、2020年に入ってから国内でのマスク出荷量が例年の5倍にあたる15億枚だったと報じました。

1ヶ月で15億枚というと、ざっくり日本の人口を1億人として一人当たり月15枚使っているという試算になります。ほぼ全員が2日に1回は必ずマスクを着用しているって、とんでもない平均値ですね。

1億人が一斉にそういう頻度でマスクをしている計算になるって、なかなかそんなことにはならないでしょう。

これが仮に中国全土で起こったら、中国の人口は約14億人なので月当たり15億枚 x 14 = 210億枚/月となって、もはや意味がわからない量になってきます。中国の国内産マスクの製造量は月産25億枚近くらしいので、8倍近く需要が供給を上回っていることになります。仮に2日で1枚のペースでも全く間に合わない計算になります。

どれだけ供給不足か、ということですね。

一度こういうブラックスワン(注)が起きると影響が甚大です。これに対処するにはあらかじめ国や地方政府、各家庭でマスクの備蓄をしておくことになろうかと思います。

一方日本では、国内の消費量は2018年の1年間で約55億枚で、ひと月あたり4.5億枚です。季節性もあるので、多い時でもひと月平均の2倍、9億枚くらいなんじゃないでしょうか。それに対して国内供給量もおおよそ同じくらいなので、月平均にすると4.5億枚くらいです。ただし、国内で生産しているのはこのうち20%くらいなので、月当たり約1億枚なんです。残りの3.5億枚は、主に中国で生産したものを輸入する形になっています。

さて、ここで冒頭で述べたように日本国内でこの1月のマスク需要は15億枚でした。こんなにひと月で需要があると、全然足りません。なにせ、調達できるのは月4〜5億枚ですから、その3倍も需要があると作り置きでもしてない限り、対応できません。

その作り置きの在庫量も、おそらく過去の統計を見る限り9億枚ほどなんじゃないでしょうか。ひと月でその在庫も使い切るレベルですね。

この2月中旬で、足りなくなるわけです。

おまけに、中国はご存知のように国内の製造業の多くが稼働できない状態ですので、かなり深刻と思われます。

そうなると、マスクの価格は当然上がるわけです。ミクロ経済学では需要曲線と供給曲線があり、供給がフル生産でも追い付かないほどに需要が逼迫すると、供給者サイドの考えとしては価格を上げても買ってくれる人がいるので、値段をあげます。まさに今、起こってることですよね。

ちなみに余談ですが、マスクが飛ぶように売れだすと、当然マスクを作っているメーカーの利益も増えるわけで、「マスク関連銘柄」の株価も軒並み高騰しています。たぶん、今から仕込むにはもう遅いと思いますが、、

 

(注)ブラックスワン:ナシーム・ニコラス・タレブさんの同名の著書で有名になった概念で、事前にほとんど予想することができないような出来事で、起こってしまうと甚大な影響が出るような事象のこと。今回のコロナウィルスも事前に予期していた人はほとんどいないものの、起こってしまうと世界全体に大きな影響を与えています。

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