日経新聞は1月7日、「ネット広告「クッキー離れ」広がる 10兆円市場変調も」と報道しました。
クッキーとは、WebサイトからそのWebサイト閲覧者のデバイスへと送られてくる簡単な情報を載せたデータです。これを利用すると、誰がどういうサイトを閲覧してきたかがわかるため、その情報を利用してその人に刺さりそうな広告をバナーなどで表示させるというようなことが簡単にできます。
例えば、あるオンラインショッピングサイトで傘を検索して探した後、全く別のニュースサイトに移動したらそこのバナー広告に傘の広告が出てきてちょっと気持ち悪いな、というような経験は誰にでもありますよね。
この時、そのオンラインショッピングサイトで傘を探していたと言う情報がクッキーを通して別のサイトに知らされてしまっているわけです。
そして最近大きな社会問題になったあのリクナビの内定辞退率情報の販売問題も、このクッキーを利用して個人を特定していました。
クッキーは使い方次第では複数のサイト閲覧履歴を使って個人を特定しうるものですので、悪用されるととても危険です。そしてWebブラウザを見ている私たちはそのWebブラウザとは何の関係もない全く別のサイトから発行されたクッキーを受け取っているという事実もあまり知らされていません。
こういう無節操なクッキーを使った個人の特定には待ったがかかり始めています。
EUではGDPR(EU一般データ保護規則)という法律が施行されており、その法律の中ではクッキーも個人情報と同様のものとして扱われており、Webサイト閲覧者の個人の同意なくクッキー情報を渡すことはできなくなっています。
そんな背景もあって、日本でも今後個人情報保護法の見直しを通じて何らかの規制がかかる見通しがあり、これまでクッキー情報を使ってターゲット広告を売っていた会社は対応が必要になる可能性があります。
現在デジタル広告マーケットで主要な位置を占めているターゲット広告ですが、こうした個人情報の保護規制やそれを求める社会的背景などから、今後はまたターゲットの仕方を変えるとか、より厳密に個人の同意を得るような仕組みを導入するとか、そういう方向に変わっていくものと思われます。とはいえ、規制を導入しても絶えずその抜け道を探す、というようないたちごっこが当面続くような気もします。
こうした規制をしないと、何も知らされていないWeb閲覧者だけが犠牲になり、広告主とメディア側が儲けを最優先する、という構図は踊り場に面していると言えるでしょう。
これからはWeb閲覧者にとっても、広告主及びメディアにとってもヘルシーな広告が望まれる社会に変容していくと思います。