こんばんは。
今日は脳科学について、脳科学や哲学の世界では広く知られているものの、一般にはあまり知られていない人間の意志についての衝撃的な内容をご紹介します。
今日の内容は以下の通りです。
- 意志と行為の関係に関する常識
- 覆された常識
- 私たちは何も知らない
- 今日のまとめ
ではいきましょう。
意志と行為の関係に関する常識
意志と行為の間には、どういう関係があるのでしょうか。こんなことをしみじみと考えてみるのも時にはいいかもしれません。
古くから、「人間の心ってどこにあるの?」とか、「意識って何?」「私はなぜ私なの?」といったような問いは存在していました。
それらは「哲学」として、長らく考察の対象となり、近年科学技術が発達するにつれて脳科学とも関連づけられ、人間の意志と行動ってどういうメカニズムで発生しているのか?というようなことも研究されてきたのです。
とはいっても、そんな難しいことを考えなくても私たちがイメージする意志と行為の関係は、例えば「手首をあげるぞ」と思って実際にあげるような場合、おおよそ以下の通りでしょう。
まず「手首を上げろ」という意志が発生します。これがないと、そもそも手首が上がることはありません。
その後手首を上げる命令が脳内で信号として発せられ、そして最後に手首が動いて終了。
特におかしいところはありませんよね。これが一般的な常識かと思います。
ところが、この常識は現代の脳科学ではすでに否定されています。
覆された常識
脳科学で有名な実験の一つに、ベンジャミン・リベットの実験があります。
ある被験者に脳波を測定できる装置をつけて、手首を上げようと思ってあげてもらうだけの簡単な実験です。手首を上げようと思った瞬間の時計の針を見てもらって、実際に手首が上がるまでの脳波の動きを確かめようという実験でした。
この実験結果から推測される手首を上げる一連の動作プロセスは以下のようになります。
- まず、「a.手首を動かせという命令」が脳内で信号として生成されます。同時に、「b.手首を動かそうという意志」を生じさせる信号も生成されています。
- bの意志を発生させる信号が先に作動し、意志が発生します。
- aの信号が作動し、実際に手首が上がる動作が生じます。
最大のポイントは、「動作を起こさせているのは意志ではない」ということです。むしろ、無意識が動作を起こさせているのです。
ではなぜ私たちは先に意志があって、それから行動が起こると何の疑いもなく信じているのでしょうか。
それは、上記のように意志が発生してから約0.2秒後に動作が発生しているからです。
順序としてまず意志が発生する。そして、ほとんど知覚できないくらいすぐ後に動作が発生する。
この前後関係があるため、そしてその間が極めて短い間であるため、私たちは意志が発生してから行為が生じるという錯覚に陥るわけです。
しかし、実際はまず無意識が手首を動かす司令を出し、同時に意識を発生させる信号も発せられます。その0.35秒後にまず意識過程が生じ、「手首を動かせ」という意志が生じます。そして遅れること0.2秒、今度は手首を動かす司令が実際に腕の神経系統に到達し、手首が動く動作が発動されます。
リベットの行った実験結果を解釈すると、私たちが描いていた意志が行動を生じさせているという人間像が、根底から覆されてしまうのです。
私たちは何も知らない
どうだったでしょうか。実際の脳内信号の伝達スピードを測定してみると、私たちの常識はいとも簡単に崩れ去ります。
実際に考えていることが正しいのかどうか、その内容が誰も疑わないような常識であればあるほど、検証しようという人は稀です。
だからこそ常識として定着しているのかもしれませんが、今回見たような例を目の前にすると、私たちが「知っている」としている事柄は本当に知っていると言えるのか?という疑問を持つことは悪いことではなさそうです。
むしろ、「私たちは何も知らない」という前提で生きていったほうが良さそうです。
今日のまとめ
- 「人間には意志があって、その意志にしたがって行動する」という近代的な人間像は、脳科学によってもはや否定されている。
- 常識を疑うことが大切、、、時にはファクトを当たってみよう
- 私たちは何も知らない