こんにちは。
いきなり蒸し蒸しして、すっかり暑い季節になってしきましたね。
今日は今アツい業界の一つだと言ってもいい転職エージェントがどれくらい儲かっているのか、ちょっとみてみたいと思います。
下の表は直近決算期における各社の決算発表数値と株価関連指標をまとめたものです。決算数値が公表されている上場企業のみを集めています。
まあ、リクルートは転職エージェント以外にも媒体の運営など色々手がけていますので、グループ全体で見るとかなり大きくはなりますが業績は好調のようです。
その他の会社も概ね業績は好調のようです。なんといってもPER、PBRが高いですね。
これらの指標は、株価が高いか安いかを測るための指標です。
例えば、株価が100円です、と言われてもその数字だけを見ても何も分かりませんよね。
他に比較対象がないからです。身長や体重は聞いたらすぐに高い低い、太い細いが分かりますよね。これは、暗黙のうちに比較対象が存在しているからです。一般的な成人の身長がどれくらいか、といったように。
あるいはこの身長に対してこの体重は重いな、というように組み合わせた指標で測っている場合もありますね。例えば170センチ60キロの人と、165センチ59キロの人とを比べて、どちらが細いか?というようなことを見たい時には、単に体重だけを見ても分かりません。身長と体重の関係を見ないとわからない。
こんな感じで、人は暗黙のうちに比較対象を用いて比べているんですね。
で、株価の場合はどうかと言いますと、株価そのものの数字を見ても何も分かりません。例えばA社の株価が100円、B社の株価が1000円だったとしましょう。B社のほうが大きい会社だと言えますか?
実は、言えません。株価というのはあくまで「1株あたりの値段」だからです。A社は100円の株価の株を1000株発行していて、B社は1000円の株価の株を100株発行していたとすると、ともに時価総額は100,000円で同じになるからです。同じ大きさの会社ということになります。
では、利益が10,000円出ている会社の株価が100円で、1,000株発行している会社があったとします。この会社と利益が100,000円出ている会社の株価が10,000円で、10,000株発行している会社とで、どっちが割安/割高なのかを考えてみましょう。
そもそも、割高か割安かというのも何かに対してその割には高い、低いを言ったものです。この場合の「何か」は、なんでしょうか。会社の価値は何によって表されるか?ということですね。
経営者の手腕だとか、ビジョンだとかいう話ももちろんありえますが、ここは客観的に誰が見ても同じものとして会社の業績に関連する数字がよさそうです。
例えば利益。利益の大きい会社ほど価値も高いと言えますよね。あとは、純資産です。純資産は、その会社が持っているすべての資産総額から借金などの負債総額を引いた正味の資産のことです。
この純資産が大きいということは、それだけ過去に利益を蓄積してきたことにもなりますので、一つの価値の指標となります。
この利益と純資産を比較対象にして、割安か割高かを判断するのは良さそうですよね。
そこで、さきほどの設問に戻ります。
利益が10,000円の会社は、発行株数が1,000株なので1株あたりの利益は10円になります。同じく1株あたりの値段(株価)は100円なので、同じ1株あたりでみると株価は利益の10倍(100/10)ということになります。
一方比較対象の会社は利益が100,000円で発行株数が10,000円なので1株あたりの利益は10円になります。株価は10,000円なので、この場合は株価は利益の1,000倍(10,000/10)になります。
1株あたりの利益は同じ10円なのに、片方の会社はその10倍の値段、もう片方の会社はその1,000倍の値段が付いているということになります。どちらが割高になるでしょうか?
明らかに後者の会社のほうですよね。
説明が長くなりましたが、PERは利益、PBRは純資産を基準にした時の株価の倍率を表しています。それぞれ、高いほど割高ということになります。
私の経験則からざっくり言いますと、日本の会社の平均的なPBRは1前後、PERは10~20の間に収まることが多いと思います。
そうすると、この転職エージェントの会社たちは概ね割高、といえそうです。特にPBRは各社高いですよね。
やはり、以前よりも転職に抵抗がなくなってきて、自由に職場を選ぶ風潮が強くなっていることが背後にあるのでしょう。
念の為、転職者数がどのくらいいるのか見ておきましょう。
下の表は人材大手3社の転職者の紹介実績の時系列推移をあわらしたものです。大手3社とは、リクルート、パーソルキャリア、JACリクルートメントの3社です。
(出典:一般社団法人日本人材紹介事業協会公表資料より筆者作成)
紹介人数はリーマンショック後の2009年下半期からほぼ増加基調が続いています。前年同月比もこの2年は上昇傾向にあります。
これは転職マーケットがどんどん拡大していることを意味していると捉えてそう間違いはないでしょう。
こうしたマーケットの拡大を背景に、各社は業績を伸ばし、株価もこの先の期待値を反映して割高になっていると考えられます。