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「こころの処方箋」 と「U理論」の繋がりについて

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今回は河合隼雄さんの著作です。

かなり前からkindleの中に入ってたんですが、最近になって読みました。

さて、今日は名言だらけの河合さんのこの書物から、印象に上がった部分をご紹介したいと思います。

それは、名付けて「51対49の法則」(そのまま)です。法則と名付けてしまいましたが、それは話をしやすくするためで、いつでも普遍的に成り立つかどうかという話をしたいわけではないので、悪しからず。以下引用です。

こんなときに私が落ち着いていられるのは 、心のなかのことは 、だいたい 5 1対 4 9くらいのところで勝負がついていることが多いと思っているからである 。この高校生にしても 、カウンセラ ーのところなど行くものか 、という気持の反面 、ひょっとしてカウンセラ ーという人が自分の苦しみをわかってくれるかも知れないと思っているのだ 。人の助けなど借りるものか 、という気持と 、藁にすがってでも助かりたい 、という気持が共存している 。しかし 、ものごとをどちらかに決める場合は 、その相反する気持の間で勝負がきまり 、 「助けを借りない 」という方が勝つと 、それだけが前面に出てきて主張される 。しかし 、その実はその反対の傾向が潜在していて 、それは 、 5 1対 4 9と言いたいほどのきわどい差であることが多い 。 5 1対 4 9というと僅かの差である 。しかし 、多くの場合 、底の方の対立は無意識のなかに沈んでしまい 、意識されるところでは 、 2対 0の勝負のように感じられている 。サッカ ーの勝負だと 、 2対 0なら完勝である 。従って 、意識的には片方が非常に強く主張されるのだが 、その実はそれほど一方的ではないのである 。

「こころの処方箋」河合隼雄 より引用

これほど分かりやすい例えはないというくらい分かりやすいので、解説は不要ですね。

 

この話、結構色んな場面でこころの片隅に置いておくと、色んな人の意外な行動を「意外」と思わなくなります。

 

自分と対立する立場をとっている人、自分とは意見が合わないと思っている人、日常生活の中で結構出くわしますよね。そういう時に、この法則を呪文のように唱えると、「もしこの人の本音が逆の意見だったとしたら、どういう可能性があるだろう?」という問いが出てきます。そして、この問いをきっかけに考えると色々とスタックしている状況の打開策が見えてくることがあります。

 

男女関係にも言えそうな気もします。嫌よ嫌よも好きのうち、、、とか言いますもんね。笑

 

さて、ここで一つ他の本で言っていることと繋がりました。

 

それは「U理論」で言われている「判断の保留」です。

 

U理論についてはまた別の機会に投稿したいと思いますが(なんせボリュームが多いのでそう簡単に手が出せない)、この中で言われていることに、「なんでもすぐに白黒判断せず、あえてグレーゾーンに置いておけ」的なことが言われています。

 

人って、長いこと生きていると余計にかもしれませんが、人から何かを相談されたり話を聞いたりしていると、すぐに「あ、それはダメなやつ」「それはいいやつ」と無意識に判断してしまって、その無意識の判断を形成した価値観にも無意識のまま、パターン認識的に物事を判断しようとしてしまいますよね。

 

それがU理論では「ダウンローディングな状態」と言われて、避けるべきこころの状態として扱われています。

 

このことと、上記の51対49の法則とはどうも繋がっているように思えませんか?

 

同じことを言っているというか。

 

「こいつはオレに反対しとる。でもやな、よう考えてみ、、、?こいつも実は迷ってて、なんらかの理由で反対してるだけなんちゃうか?実はオレと意見が同じ部分もあるんちゃうか?」と。2対0に見える部分ばかりが気になって、自分とは180度異なる立場に見えるけど、実は51対49なのかもしれない、、、仮にそうだったとすると、どういう可能性があるか?と自問自答できれば別の選択肢を思いつく可能性が高まりそうですよね。

 

2対0とすぐに決めつけて見てしまったらあかんよ、ということなんだと思います。それが判断を保留するという意味にもなる。

 

そうすると次は、判断を保留すると答えをすぐに出さないことになるのか、という話が出てきそうですね。

 

これについての私の見解は、「判断は一旦することがあっても、決してそれで「もう安心だ」「もうこれで行くと決めたんだから、何が何でも」とか、そういう風に決めきってしまわないこと」だと思います。組織を動かしていると、判断が必要になることは多々あります。判断しないと、現場も動きません。また、動いてみないと結果が分からないことは山ほどあります。そういう時、一旦判断はするけども常にその判断の前提となった考え方が否定される可能性を頭に置いておく、ということだと思います。

 

これが結構難しい。なんせ、会社の上にいる人はみんな「自分は正しい」と思ってますから。「自分は正しいんだ、だから言うこと聞け」「上司の言うことは正しいもんだ」って。だから、自分が間違えてたことを受け入れるのが難しいんですよね。なので、これを実践するとなるとその辺の不要なプライドが邪魔になってしまう。

 

そんなプライドは何の役にも立たないんで、さっさと捨ててしまいましょう。

 

ということで、今日の教訓です。

 

  1. 人間は差異を大げさに認知してしまう傾向がある。ある態度をとる人を見てそれが100%その人の思っている事だと短絡的に思わないこと。逆の立場と僅差である可能性を視野に入れておく事。
  2. 自分がある考えを持った(ある判断をした)としても、それと相反する考え方を捨ててはいけない。人間は過大に自分の決定を評価してしまうから。でも現実はそうとは限らない。
  3. 役に立たないプライドは今すぐ捨てよう。

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